TOPみんなでつくるリネアストリアウィッグは、わたしと咲く。角田萌夏「全てのことに意味がある」

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着用ウィッグ:ラテショート

6歳の時に脱毛症を発症し、高校3年で全頭脱毛症に。 歌うことや踊ることが幼少の頃から大好きだったこともあり、母親の勧めで演劇の世界へ。 現在、劇団TipTapに在籍し舞台やミュージカルに出演。

6歳で脱毛症に

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一番最初に髪の毛が抜け始めたのは6歳の時、小学校入学の直前でした。ある日、鏡を見ると自分の髪が少なくなっていることに気づきました。「これじゃ恥ずかしくて学校に行けない」と泣き出した私に父は「限られた人しかならないことに選ばれたんだから凄いよ!有名になる人はみんなこういうことを乗り越えてるんだからね」と私を励ましてくれました。幼かった私は、父のこのポジティブな言葉のお陰で頭にバンダナを巻いたり、帽子を被って元気に登校することができたし、友達に何を聞かれても平気で「これ病気だから」と言うこともできました。

もともと明るい性格で歌うことや踊ることが大好きだった私を、母はミュージカルや劇団に連れて行ってくれました。「自分の輝ける場所を自分で見つけていってほしい」そんな思いだったと思います

父の言葉、そして母のサポートもあり脱毛症はそのうち治ると前向きに信じていました。

もう治らないと言われて

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その後何度か髪の毛がはえそろった時期もありましたが、抜けてはまたはえてをくり返し、高校3年生の終わりに全頭脱毛症に。頭にステロイドの注射を打つなど辛い治療もしたけれど全然良くならなくて、遂にお医者さんから「ここまで悪くなると完全に治ることはないね」と宣告されてしまいました。

脱毛症のことはずっとコンプレックスだったし、髪の毛をさらさらさせているCMを見ると「私には髪の毛がない」ってことを否応なく突きつけられている気がして。辛くて、苦しくて、みんなにあるものが自分にはない。「なんで自分だけがこんな目に合わなきゃいけないの」って自分を追い詰めもしたし「なんでこんな病気になったの」と母に当たってしまった時期もありました。

ウィッグを初めて使用したのはその頃。ウィッグをかぶっている自分はどこか偽っている、嘘をついている気がしていました。友だちと仲良くなるにも私に髪の毛がないことを相手は知らないし、私も伝えられない。ウィッグは消耗品なので使えば使うほど傷んできて、新しいウィッグにかえる時は髪型が変わらないようにってすごく気をつかいましたね。髪の毛の話題になったらなんて言おうってずっと考えたり。仲の良い友だちから温泉に行こうって誘われると「どうやって言おう?」「なんて言ったら受け止めてもらえるんだろう?」ってすごく悩みました。ウィッグは絶対自分に必要なものだけど「自分を偽っている」ずっとそんな気持ちでした。

演じれば忘れられる

角田萌夏様の写
真
角田萌夏様の写
真

母がすすめてくれた演劇の世界は煌びやかなステージ、そして日常生活では感じられない華やかさがあり次第に惹かれていきました。そして演じると違う自分になれたんです。ウィッグをかぶっていることでずっと嘘をついているような気持ちが、演じれば忘れられる。脱毛症を抱えている自分の苦しさから逃げ出す手段としても演劇にはまっていきました。嫌な自分を忘れて他の誰かになる、いつの間にかそれは私の「生きがい」になっていました。

ある時オーディションで「これからどういう人になりたいの?」と聞かれました。ミュージカルのオーディションでは歌やダンス、芝居などの課題を披露することが一般的なのですが、その時は自分の価値観について聞かれたんです。私の人生を語る上で避けることのできない「脱毛症」。周りにひた隠しにして、普段なら触れることもないはずのこと。隠したいけど、誰かに聞いてほしい、知ってほしいってずっと心のどこかで思っていたのだと思います。今までの自分のことを話しました。悩みながらも弱さを隠し、人に負けないよう足掻いている自分の気持ちを。「つい喋ってしまった」という感じでした。後悔するような気持ちになりましたが、思いがけない言葉が返ってきたんです。「人と違う人生を生きてるってことは、表現者としてとても大切なことなんだよ。辛いかもしれない、だけど全てに意味がある」モノクロだった私の世界が一気に明るく彩られた、そんな瞬間でした。脱毛症であることはずっとマイナスだと思っていたのに、自分にとってプラスになることだと。初めて他人から肯定されたと感じた瞬間でした。そこから自分の中で価値観が逆転していきました。演じることは、自分をゼロにして違う人になる、違う人の人生を生きることだと思っていたけれど、自分という人間がいないとそれはできない。経験や感じてきたこと、自分の中にたくさんの想いがあるからこそ、魂から演じることができる。その人の人生を生きられ、表現できる言葉がある。それが演じるということの魅力であると今は思います。

脱毛症と共に生きる

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「全てのことに意味がある」と知ってからの私は、どんな時でも置かれた場所で私なりに咲くことが幸せだと思えるように変わりました。それまではウィッグをつけていることを周りに悟られたくなかったし、前日と違う髪型になることで何か思われないかと気にしていました。でもそれは自分自身が髪の毛が無いことを心から受け入れられていなかったからで、堂々と日替わりでウィッグを楽しめるようになると、自然と周りも変化してきました。「ショート似合うね」「大人っぽくみえるよ」と声をかけてもらえることも増え、自分ならではの楽しみも感じるようになった今は「脱毛症と共に生きてます」って胸を張って言えます。

脱毛症でなくても誰しもコンプレックスを抱えていたり、生きることが苦しく思える時もあると思います。その気持ちに全部蓋をしようとせず、その時感じた想いを大切にしてほしい。私が演劇に出会えたのも、今続けているのも全ては脱毛症がきっかけだったのかもしれないから。

苦しいと思う気持ちを乗り越えるのではなく、その中で共に生きられるように。没頭できることや楽しみを見つけて欲しい。そして自分が楽しいと思える場所に居続けられるように、自分のペースで生きていきましょうってたくさんの人に伝えていきたいです。

writer:Naka Kokoro

メッセージ

ひとと違う人生を生きることはきっと、自分の強みになる。