やらない後悔よりやって後悔したい ここあ
このままでいいんだ。これが私なんだって本当の意味で受け入れられた気がした
自然なウィッグ・エクステ通販のリネアストリア
着用ウィッグ:天使のシャルムカール
薬剤師として働きだして半年後に脱毛症を発症。
現在も薬剤師として働く傍ら、職種を活かして脱毛症の治療法や治療薬の情報にアンテナを張りながら治療を続けている。
社会人1年目の秋、美容師さんに「500円玉くらいの円形脱毛があるよ」と言われ、そこで初めて髪の毛が抜けていることに気づきました。それから、あれよあれよという間に抜け落ち、その年の冬にはほとんどなくなってしまいました。あっという間の出来事でした。小さい頃に入院したことがきっかけで医療人を目指すようになり、薬剤師として社会に出て半年後のことでした。
小さい頃の私は、よくしゃべる子だったと思います。家族にも友達にも先生にも、とにかく話して、聞いてもらうことが大好きでした。その中でも特に母と話すことが好きでしたね。学校から帰ると母の後ろをついてまわり、学校であったことを全部話す。いいことはもちろん、悪いことも。秘密にしたいことも秘密にできなくて、嘘なんて絶対につけない。少し心配なことでも母に「大丈夫だよ」って言ってもらえると安心できました。
中高生になると調べることも好きになり、気になったことは調べつくさないと納得ができない。脱毛症になった時も病気のこと、治療のことをめちゃめちゃ調べました。国内の治療のガイドラインはもちろん、海外の文献も翻訳して読みました。なので自分の症状を見て先生にこんなことを言われるかなと想像がついていたし、どういう治療があるかもわかっていました。調べつくしていたこと、そして薬剤師として日々患者さんの治療やお薬と向き合っていることもあり、自分の治療も冷静にとらえていました。
でもそんな冷静さとは裏腹に髪の毛がたくさん抜けていくのは怖くて、つらかった。特に抜けるのはお風呂で髪を洗っているとき。ザーっと抜け落ち、排水口へ流れていく髪の毛。ドライヤーをするとまたさらに抜けてしまう。抜けて山になった髪を見ると喪失感で泣いてしまうこともたびたびありました。
最初は髪の毛を結んでなんとか隠して乗り越えようと思っていました。きついゴムで結ぶと抜けてきちゃうので、やさしいゴムを使うなど工夫もしていたけれど、頭頂部の髪の毛がなくなってくると地肌が見えてしまう。あっという間に隠しきれなくなってしまいました。ウィッグが必要だと感じつつも、私の中ではコスプレのイメージが強く、普段の生活に使うという想像ができなかったんです。周りにウィッグを使ってる人もいなかったので、誰に相談していいのかもわからなかった。それでももう隠すのは限界だと感じウィッグの購入を決意しました。
初めて購入したウィッグは、ロングとボブの2種類。地毛が長かったこともあり、ロングはしっくりきました。驚いたのはボブが想像以上にしっくりきたことです。仕事の時はロング、遊びに行くときはボブにしようかなと考えていると、久しぶりにウキウキしている自分がいることに気づきました。
何事も黙っておくことのできない私は、そのウキウキした気持ちを伝えたくて母の所へ飛んで行きました。母は「似合ってるよ」と自分ごとのように喜び、そして褒めてくれました。褒められるってすごく嬉しい。私の不安だった気持ちをぬぐいとってくれた、そんな気持ちでした。
脱毛症になっていつの間にか、しゃべることが大好きな自分を閉じ込めてしまっていたんです。自分の中に抱え込んでいた感情が解き放たれた瞬間でした。それからの私は家族にはもちろん、友人にも脱毛症のこと、ウィッグのことを話すようになりました。周りの人と話すことで私の不安は少しずつ消えていったように思います。
ちょうどその頃、大学の同窓会がありました。そこで後に夫となる人とも再会し「私髪の毛抜けちゃった」って話すと「え?そうなの」ってそれだけで終わったんです。あまりにあっさりした反応にびっくりしました。その後お付き合いすることになりウィッグをはずそうか悩んでいた時も「いいじゃん」って。驚きもせずそのままの自分を受け入れてくれたことは私にとても大きな影響を与えてくれました。
周りの人たちの「大丈夫だよ」という言葉が私の心に積み重なって、少しずつ前向きになっていきました。それから9年が経ち、いまもウィッグなしの生活はできないけれど、ウィッグがあって良かったって心から思います。ウィッグがあれば何も気にせず外へ出られるし、仕事も変わらず続けられる。友だちとでかけたり、大好きなライブだって行ける。結婚式も楽しむこともできました!私はウィッグで「私らしさ」を取り戻すことができたんです。
私は薬剤師という仕事柄、常に新しい治療や新しい薬の情報が入ってきます。調べることが好きなこともあり、これから脱毛症の治療にどんな薬の認可がおりるかということにもいつもアンテナを張っています。「治さなきゃ」って強く思っているわけではないけれど、「いつか良くなるといいな」という思いで今も治療を続けています。今までも色んな治療にチャレンジしてきました。治療によっては、うぶ毛がふさふさになったり、黒くなってきたこともありました。新しい薬が自分に効果があるかは分からないけれど「治療の効果があった」その時を知っているから。いつか思い返したときに「あの時、あの治療をしていれば治ったかな」って後悔だけはしたくない。治る可能性があるならその可能性にかけてみたい。そんな思いで治療を続けています。
今も薬剤師として医療に携わっている者として、どんな病気であっても治療は早い方が選択肢が広がるので、医療に頼って欲しいという気持ちがあります。しかし、私の経験を含め思い通りに結果がついてこない場合があることも実感しています。私も脱毛症になり初期症状の頃から病院に行っていたけれど間に合わなかった、食い止められなかった。医療人として冷静な部分もありつつ、自分の髪が抜け落ちていくときの喪失感や治療へのプレッシャーで、精神的な苦痛を感じたこともありました。そんな時は一旦治療から離れ、ウィッグを使うなどして今の生活を充実させることも大切だと思っています。気分が落ち着いたら再開するなど、心身と相談しながら進めて欲しいなと思います。
また、私は周りへ話すことで自分を取り戻しましたが、全ての人に合う方法だとは思っていません。ご自身に合った「気持ちを楽にする方法」が見つかればいいなと心から思います。
writer:Naka Kokoro