TOPみんなでつくるリネアストリアウィッグは、わたしと咲く。もえ先生「「患者さんの伴走者」でありたい。」

地域の人たちに一番近い存在の「総合診療医」として、活躍中。
20歳の時、汎発型脱毛症になった自身の経験・心の変化をもとに、患者さまに寄り添う診療を行っている。

総合診療医という仕事

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お医者さんになろうと思ったのは小中学生の時。自分がイメージのできる職業の中で「人のために働けて、一生学び続けられる仕事」と思ったことが一番大きかったかな。

夢が叶った今、私は「総合診療医」として働いています。「総合診療」とは人間の一つの臓器を極めた専門の科ではなく、全身のこと、身体だけでなく心も含め、なんでも相談にのれる。お子さんからご高齢の方まで誰でもかかれる。昔からいる町のお医者さんをイメージしていただくと一番近いかな。現代において、お医者さんの専門も細分化されて「一人の人が色んな科に行く」状況がでてきたと思うんです。鼻水がでたら耳鼻科へ、喘息かなと思ったら呼吸器内科へ、胸が苦しいと思ったら循環器内科へ、とそんな風に。それを「全部診る」を実践しているのが総合診療医です。

地域に住む人たちに一番近い存在、そんなお医者さんになりたい。患者さんとめぐりあって、ともに過ごす時間の長さにかかわらず「その人がその人らしくいられるように」。 人生の最後の大事な時間まで一緒に歩いていける。いつでも、どんな状況であっても「患者さんの伴走者」でありたい、それが私の目指す総合診療医です。

冷静さと裏腹に

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そんな風になりたいって思ったのは、自分が病気をしたことも背景にあるのかなと思います。 20歳の時、急に脱毛症になったんです。汎発(はんぱつ)型といって、髪の毛だけではなくまつ毛も眉毛も、あっという間になくなってしまいました。もともと髪の毛が多かったので、くしでとかしたり、絡まった髪の毛をほどくときに抜けるのはあまり気にしていなくて。でもちょっと多いかなと感じていた時に、部活の仲間が「たくさん髪の毛抜けてない?」って心配の声をかけてくれて、それで自覚したって感じです。
次第に何もしてなくても抜けるようになり、学校で講義を受けているだけで後ろの席に髪の毛がいっぱいたまってしまって。後ろに座った子が気づかないようにきれいにしてくれるんだけど、それを見ると悲しかったな。お風呂では抜けた髪の毛を集めて並べたり、心がなかなか追いついていかなかった。

そんな私を見て、母は小さい頃から通っていた皮膚科に連れて行ってくれました。そこでは、あまり説明もなく太い針がついている注射器でバシバシ頭を打たれました。それがすっごい痛くて、目に火花が散るんです。今でもあの時ほど痛い経験をしたことがないくらい。毎週通うんだけど、痛い思いとは裏腹にどんどんひどくなっていく。
「なんでこんな治療しないといけないのかな」ただただ悲しかった。
そんな時に先輩から大学病院に受診してみたら?ってアドバイスをもらって行くことに。緊張しながら待合室で待っていると、中から「20歳で脱毛症か。かわいそうだね」って会話が聞こえてきて。それもすごく悲しかったな。

治療が始まるとウィッグをつけなくてもいいくらいに治ったんです。でも喜んだのもつかの間、またいっせいに抜けはじめてしまって。良くなったり、ぐっと悪くなったり。
当時お付き合いしていた方は、どうにかして髪の毛のある私に戻らないかと懸命に良くなる方法を探してくれたり、高いサプリメントを買ってくれたりもして。自分の為に一生懸命にしてくれていると思うと嬉しい反面、かえってその思いがつらくなることも。
「なんで私なんだろう」「なんで髪の毛抜けちゃうんだろう」つらかった。受け入れられなかった。

思いは振り子のように

もえ先生様の写真
もえ先生様の写真

そんな時、部活の先輩が「髪の毛があってもなくても、みんな大好きだよ」って言ってくれたんです。嬉しかった。「あってもなくても自分なんだ」そう思えた時のことは今でも鮮明に覚えています。でもずっとそう思えていたわけではなくて、みんなみたいに美容室に行きたい。短くしても伸びてきたり、好きな色に染めたりもしたい。やっぱりみんなと一緒がいい。
「戻りたい」と思う自分と「今のままでもいいのかな」と思う自分。思いはまるで振り子のようにいったりきたりを繰り返していました。

で親友は私が真面目に薬を飲まないからって誕生日におしゃれなピルケースをくれたり。毎日ちゃんと飲めてるかチェックしてくれたり。からかわれないように周りに話をしてくれたり。守られてるという感じがして嬉しかった。その安心感は私の振り子を少しずつゆっくりにしていってくれたように思います。そのうちに、あまり話したことのない同級生が「そのウイッグ似合ってるね」と言ってくれたことも嬉しく感じたりして。ウイッグをつけることもおしゃれとして楽しめるようになりました。ウイッグも私を守ってくれる大事な存在でした。

部活を引退してみんな医者になりそれぞれの道を進んだけれど、新たな出会いもありました。「髪の毛あってもなくてもいいよ」と言ってくれる夫との出会い。そして私の振り子はまた少しずつゆっくりに。最近は揺れることも少なくなり「今の私がいいな」って思えてきてるかな。

どの時も支えていきたい

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私が総合診療医として日々接する患者さんの気持ちも同じなのかなと思っていて。患者さんの心も「その時」や「状況」によって揺れ動いているのかなと思うんです。
それは患者さんご本人にも伝えていて。例えば「入院したくない」って今は思っていたとしても、変わることもあるかもしれない。なので「そう思っているんですね」ってだけで終わるのではなく「今の気持ちは変わることもあるかもしれない。変わってもいいと思うし、その時も聞かせてね」って。
そして私自身がそう言えることも大事にしたい。私の寄り添う気持ちも患者さんとともに変わってもいい。
年齢による体調の変化や病気により、その人も、その人らしさも変わっていくことがあるかもしれない。
患者さんの心の振り子がどの時であっても、患者さんとその人らしさを支えていければいいな。

これからもめぐりあえる人とのご縁を大切に。その人が。その人らしくいられるように。
その為に自分ができることを精一杯やっていきたい。それが今の私の夢です。

writer:Naka Kokoro

メッセージ

ウィッグも
‘わたしらしさ’のひとつ。
’めぐりあい’に感謝。