抗がん剤治療中の方へ抗がん剤治療ご経験者様エピソードりみのさま

抗がん剤治療
ご経験者様エピソード りみのさま

りみの様のイラスト

りみの

現役看護師。急性期総合病院から小児科クリニックへ転職した半年後に浸潤性乳管癌と診断される。ルミナルB、HER2陰性。
術前ケモ、乳房全摘、腋窩郭清、放射線治療を終えホルモン治療中。

History

浸潤性乳管がんステージ.3cと判明。
採卵~未受精卵7個凍結後にddEC療法を開始。全4回投与。
パクリタキセルを全12回投与。
乳房全摘+腋窩リンパ節郭清術後にステージ2bと判明。
ホルモン療法(タモキシフェン、ゾラデックス注)を開始。
放射線治療50Gy(鎖骨、胸骨傍、腋窩リンパ節、胸壁)を20回受ける。

目次

Episode1

発覚~考えないといけないこと

発覚~検査

私が乳がんに気が付いたのは2018年の秋。たまたま入浴時に泡を立てて手で体を洗っていたら、「あれ?いつもと何か違う」と、胸にしこりがあることに気が付きました。その時に自分で触診してみたところ「これ、やばいやつだ」と直感。すぐに、仕事終わりでも診てもらえる乳腺外科クリニックを検索し、しこりに気が付いてから3日後に受診することに。

受診するまでの3日間は検索魔になっていて色々調べました。しこりを発見する半年前に、乳がん検診でマンモグラフィーを受けていて「異常なし」の診断をされていたのと、まだ30代で若年のしこりは繊維症等の良性の場合が多いらしく「まさかね……」って思いながらも気持ちがざわざわしていました。

クリニックで受診してみると、マンモグラフィーの画像を医師が確認して「特に何もないよ。半年前に検査受けて問題なかったんでしょ?」と言われてしまって、「ちょっと先生!これ!ここ、触ってみてくださいよ~」と食いついて、やっとエコーを取ることに。

そして、エコーで影がみつかったので日を改めて細胞針、生検、造影やCT等検査をしました。今考えると、危うくがんを見過ごされるところだったので、まさに九死に一生でした。

その後、細胞針での検査では「クラス5、悪性の可能性が高いので詳しく調べます」との説明を受けました……。またすぐに「クラス5ってどんな状態?」って検索(笑)。調べてみたら「検査の間違いがない限り、限りなくがんの可能性が高い」って書いていました。医師は確定診断出るまではっきりとは言いませんが、情報社会って凄いなと思いました。

この時に印象的だったのが生検で使用された針!後にも先にもこんな太い針を刺されたのはこの時だけってくらい立派な針でした。鎮痛剤を内服していたので痛みはさほどでもなかったのですが、生検翌日も傷から出血していたので仕事の合間にトイレでガーゼを取り替えたりと大変でした。組織を採取する針なのでしょうがないのですが、今考えても手術やその他の何よりも衝撃的でした(笑)。

がん告知の際の心境

クリニックでの検査が一通り終わり、確定診断が出た時には初診から2か月位経過していました。私が看護師だったこともあり、医師の告知の際も家族を呼ぶわけでもなく、「やっぱり悪性でした。悪性度が高いのでなるべく早めに手術ができる病院に受診できるようにするね」と説明を受けました。

私は前職もがん看護に関わっていて、両親もがん経験者。友達やいとこも20代で子宮頸がん手術をしていたりと、がん患者が身近にいたので「自分もいつかはがんになるだろう」と思っていました。現実は思っていたよりも早かったのですが(笑)。

そんなこともあり、乳がんが発覚した時も「目の前が真っ白になった!」とか「ショックで話が聞けなかった!」などは全くなく、さほどショックを受けずに子宮頸がんの手術をしたいとこに「ちょっと聞いてよ~!やらかしたわー」と、すぐに連絡したのを覚えています。

そして、「乳がんは遠隔転移がないし、初発なら割と予後は良いし、治療法もたくさんある。切除する胸はあくまで体の付属品みたいなものだし、内臓を切除するより生きていくのには全然困らないじゃん!ラッキーな部位だった」と思っていたので、周りの人の心配をよそに私はあっけらかんとしていました。

ただ、私は子どもが大好きで、そろそろ結婚や出産をしたいなと思っていた矢先でのがん発覚だったので、「乳房全摘したら結婚はできないかも」「抗がん剤治療すると出産無理かも」と、がんになったことよりも、この2つに対するショックが大きくて、できるなら部分切除で抗がん剤は避けたいと思っていました。

でも、がんセンターの医師から乳房全摘、抗がん剤、ホルモン治療をすると説明を受けてからは、「もう、こうなったら徹底的に治療しよう!がん撲滅!」と腹をくくって、その後は治療に対してネガティブになることはなくなりました。ネガティブどころか、がん発覚してからゴスペラーズや嵐のコンサート、クリスマスパーティも2回やったし合コンにも行ったりと、かなり精力的に動いてました。治療と楽しみは別腹なのです!(笑)

考えないといけないこと

初診から治療開始まで考えなきゃいけないことは沢山ありました。

・仕事とお金のこと

私の働くクリニックは看護師3人でギリギリ仕事をまわしていて、繁忙期には熱があっても休んじゃダメと言われていました。前職で抗がん剤治療を見ていた経験から、仕事をしながら約半年の抗がん剤治療を行うのも無理ではないと思っていました。

でも、治療が始まってみなければ体調も分からないし、治療で免疫が落ちている中、冬のクリニックで胃腸炎やインフルエンザの患者さんと濃厚接触するのは怖い。万が一感染したら抗がん剤治療が中断してしまって、薬の効果が十分に発揮できなくなる。同僚の看護師には理解を得られず散々小言を言われましたが、自分の体は自分しか守れない、無理して仕事を続けて治療できなくなっても職場の人は責任とってくれるわけでもないのだから、今は治療を優先しようと決めて、手術が終わって体調が戻るまで約8か月休職することにしました。

肩身の狭い思いをしているよりは退職しようかなとも思いましたが、保険証がなくなるのは困るので職場にお願いして在籍させてもらい、無給でしたが傷病手当金の申請をして細々と生活していました。ちなみに奨学金の返済もしていたので貯金は100万円位しかなく、医療費と生活費であっという間に消えましたが、がん保険に入っていたので、一人暮らしでも働かず何とかなり保険さまさまでした!

・親への報告

今では二人とも元気ですが、両親は二人ともがん経験者なので人一倍がんって病気に敏感でした。特に母は本当に心配性というか過干渉なので、私ががんになったと知ったら実家に戻されるかもしれない。もちろん心配させたくない気持ちがあったのですが、絶対に面倒くさいことになると思い両親に報告するのを躊躇していました。中途半端な情報ではなく、治療方針も全部決まってから伝えることにしたので、結局母が知ったのは告知から2か月後位です。

いとこが乳腺外科の看護師なので色々相談はしていましたが、治療方針も病院の選択も全部一人で決めてしまいました。私から報告を受けた母は「え?もう全部決まったの?」と半分呆れていました(笑)。

・ウィッグのこと

乳がん治療で使用する抗がん剤は、脱毛が必須とがんセンターの看護師から説明を聞き、ウィッグを購入しなければと思っていたものの、通院や仕事で忙しくてなかなかウィッグのサロンに行けないでいました。

抗がん剤治療を開始する1週間前にやっとサロンへ行って試着させてもらいました。当初は予算6万円位までと考えていましたが、色々試着するとやっぱり高いものの方が軽くて自然でした。迷いに迷って最後に試着したウィッグがその時の髪型と同じでしっくりきたので、結局15万円の高級ウィッグを購入してしまいました。日々、医療費で数万とかかっていたこともあって金銭感覚おかしくなっていたと思います。「保険金出るし、まぁいいか」という感じでした(笑)。

その後、せっかくだしウィッグを楽しもうとリネアストリアさんのウィッグも2着買って、結局そっちのウィッグを毎日使っていました。お安いので良い意味で気楽に使えたというか、気兼ねなく楽しめて、前髪を切ったりアレンジして傷んでも、また買えばいいかなってファストファッション感覚で楽しんでいました。毎日違うウィッグを着けていたので、マンションの管理人さんに二度見されたこともありましたが。

リネアストリアさんは病院で知り合った20歳代の乳がん患者さんに教えていただいて、もっと早く知っていたら高級ウィッグは買っていなかったかもしれないと思うと、ちょっと勿体なかったですが、正直がん患者って治療始まるまでバタバタと考えることがありすぎて、落ち着いてウィッグを調べる余裕がないんですよね……。

Episode2 生殖医療