抗がん剤治療中の方へ抗がん剤治療ご経験者様エピソードDokoさま

抗がん剤治療
ご経験者様エピソード Dokoさま

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Doko

2018年11月に卵巣癌&子宮体癌が発覚。翌月よりTC療法+アバスチンにて化学療法をスタート。
2019年4月に寛解。現在は、再発防止のためのアバスチン単剤での維持療法中。

目次

Episode6

これから

「寛解」だけど「完治」じゃない。

卵巣癌ステージ1Aグレード3。これが現在での最終的な私の診断結果です。

手術では、病巣である右卵巣はもちろん再発のリスクを下げるために左卵巣、子宮、大網(腸を覆うようにかぶさっている組織)を摘出しました。最終的には他臓器への転移は認められなかったものの、手術、全身化学療法を経て、現在は「分子標的薬(アバスチン)」での3週間に1度の点滴による治療を継続しています。私には無治療期間となる経過観察が今のところはありません。

幸いにも抗がん剤治療中は、副作用で生活に支障が出るような重篤なものはなく、現在進行形で治療中ではありますが、病気になる前と何も変わらない生活を送っています。お酒も病気になる前と同じように飲んでいますし、運動も今までと同じようにできて、治療中でも何も規制がありません。それでも、経過観察にはならないことを不満に思い、分子標的薬の継続治療に対して疑問を持ちました。「私より進行している人でも治療を終了して経過観察になっている人がいるのに」と。

ただ、病期はステージ1Aでも経過が悪かったこともあり「一般的なステージ1Aの人が行う治療法には当てはめられない」と言われました。それでも、分子標的薬での治療を継続せずに、一旦治療を終了させて経過観察への道を選択することもできたのかもしれません。すごく悩みましたが、結局は「治療は自分のためだなのだから」と治療を継続することにしました。

がんには「完治」という言葉は使わずに「寛解」という言葉を使うそうです。寛解とは「症状が落ち着いて安定した状態」になること。つまり「現状は、症状が一時的に軽くなったり消えたりしているのでこのまま治る可能性もあるけれど、場合によっては再発するかもしれない」という意味で、再発のリスクを常に抱えている状態であるとも言えます。

がんというのは「もう治ったの?」と聞かれた時、胸を張って「治ったよ!」と答えられない病気なのだと実感しました。だから、現時点で再発リスクを下げるためにできる治療があるならば、もう治ったと思いたい願望に左右されずに、しっかりと前を向いて治療すべきなのでは?と思い直し、エンドレスと言われた分子標的薬での治療を継続することに決めました。

「完治ではなく、寛解なのだから治療しよう」と。

「がんサバイバー」とがんとの共存

がん患者は「がんサバイバー」と呼ばれることがあります。実は、がんサバイバーという言葉に抵抗があり「がんサバイバーさんなんて絶対に言われたくない」と思っていました。

サバイバーで思い浮かぶのは、いわゆるサバイバルゲーム。サバイバルゲームと聞くと、生き残りゲームみたいなイメージが強くて「私は生き残りじゃない!」みたいな反発心がありました。他の方は、がんサバイバーと呼ばれることに抵抗ないのかなと不思議に思っていました。

しかし、調べてみると「がんサバイバーとは、がん体験者全員を指す言葉であり、がんと向き合いながら生きる」という意味を含んでいるのだと知りました。その意味を知ってからは、言葉への反発心は少し軽くなりましたが、自ら「私はがんサバイバーです」と発言するにはまだ抵抗があるのが正直なところです。

がんへの向き合い方や考え方、症状などは人それぞれなので「一括りでがんサバイバーと呼ばないで」と思う気持ちもあります。がんを患っていても、私は私です。とはいえ、実際に私はがんサバイバーであり、現在進行形で治療をしているがん患者です。治療を続けていく限り、自分には「がん」という言葉がついて回るのは確かなことなのです。

ただ、以前と全く変わらない生活をしていることもあり自分ががんであることは、むやみに公言はしていません。「私ががんであると知ったら相手に気を使わせてしまうのではないか?」と思うからです。今までと変わらずに接して欲しいから、言わないことを選びました。

1度がんになると、5年経っても10年経っても再発することがあると言われています。実際に闘病ブログを書かれている方や芸能人の方でも、5年以上経過した後に再発した方がいらっしゃいました。

再発するかもしれないと怯えながら生活するのは精神的にも悪影響なので、体内に残っているかもしれないがん細胞にはおとなしくしていてもらおうと思うことにしました。完全に抹消しようとすると、がんと戦うことになるわけで、それはちょっとしんどい。「私の体内に居場所を貸してあげるので、そこでずっとおとなしくしていてね」と思う方が楽です。これからはがんと共存していくことになるので。

がんにおとなしくしていてもらうために、生活習慣や食生活にも今まで以上に気を使うようにはなりましたが、極端な方向へと走らずに、バランスを心がけています。

オシャレにがんと共存したい

がんを経験してから人生観が変わったとよく聞きますが、私の場合は特にそういったことはありませんでした。ただ、今まで入院するような大病を患ったことがなかったので、3週間の入院、手術はもちろん、闘病生活は何から何までが初めての経験で刺激的ではありました。

卵巣がんについての情報源は、ほぼネットです。専門的なことまで自分で調べられるので、主治医の言っていることが最初は理解できなくても、自分で調べて理解することもよくありました。

また、がん経験者の方のブログもたくさん読んで、症状や経過についてはもちろん、入院生活でのちょっとした疑問なども闘病ブログでどなたか書かれていないかと調べて参考にしました。脱毛時のウィッグについてもネットをフル活用して調べました。

そんな風にネットを活用しても困ったのは、抗がん剤治療中の外見ケアのことです。脱毛が始まっても、普段の生活ならばウィッグで解決しますが、入院中や通院時は皆さんどうしてるのだろうと思いました。ウィッグを着用するか、病院だからとウィッグではなく帽子などで脱毛をカバーするか。

たとえ主治医であろうと看護師さんであろうと、病気のせい、薬のせいだと分かっていても、髪が無くなった姿は他人には見られたくないですし、何よりも鏡やふとした瞬間にガラス窓に映った自分の姿を見た時にモチベーションが下がります。脱毛中の通院、入院スタイルについては、ブログなどでもあまり情報を得られず本当にどうすればいいのか悩みました。

「がん患者だって、入院してたって、脱毛してたって、お洒落したい」。でも「ここは病院です」と言われるんじゃないかなど本当にいろいろ考えましたし、必死でネットでも情報を集めました。2人に1人ががんになる時代だと言われており、さらに今では抗がん剤治療は外来で日帰りで行うことが主流です。それにも関わらず、抗がん剤治療のための通院スタイルや脱毛中のファッションなどの情報源がないのです。

最終的には、入院中はウィッグではなくいわゆる毛付きのケア帽子を被ることにしたのですが、市販されているものはどれも「私はがん患者です」と言わんばかりの悲壮感が漂っているものが多かったです。

そこで、お肌にも優しく、洗濯もできて、エクステのように取り外しが自在で、モチベーションも上げてくれるケア帽子を自作しました。ケア帽子を自作するまでに、毎日血眼になってネットで情報を集めました。

そして、必死で集めた情報や、実践したことなどを誰かのためになるかも知れないと闘病記のブログを始めることにしました。「私と同じような人が絶対いるはずだ」と。

すると、がんサバイバーの皆さんから闘病中の出来事や疑問に思ったことなどについて、たくさんのコメントが頂けるようになりました。病状や脱毛中のこと、副作用のことなど「私はこうしました」とか「私の場合はこうでした」など。現役のドクターや看護師さんからのコメントも少なくありません。皆さんからのコメントで、入院中のハテナが解決することが多くて本当に助かりました。

がんになっても人生感は変わらなかったけど、がんになったからやってみたいことが見つかりました。がんにならなかったら気付くことすらなかったことです。がんになっても、入院していても、女性ならオシャレしたいと思います。そして、それが闘病へのモチベーションにつながることもあります。

今の私の目標は、がんと共に明るくオシャレに闘病生活を送るための、主にウィッグや入院、通院時のファッション、入院便利グッズなどの闘病スタイルに特化した情報サイトを作ること、オシャレに明るくがんと共存すること。そして、そのために情報発信をし続けることです。

これから治療される方へ

ウィッグは新しい自分発見へのチャンスです。

今までの自分の髪型に囚われず、思い切って180度イメージが違うウィッグをどんどん試してみるのもいいと思います。

脱ウィッグをした今、小さい頃からずっとロングだったので、ショートスタイルにするなんて考えてみたこともなかったけど、今ではロングにはもう戻ることはないかなと思っています。

脱毛したおかげで、新しい自分を発見できました。

そして、髪が抜けたときには次に生えてくる髪が艶々になるように、栄養を十分に摂り頭皮ケアをするのもお勧めです。

新しく生えてきた毛は白髪だらけでクセ毛になってしまったなんて声をよく聞きますが、私は白髪は生えてこなかったですし、クセはむしろ治療前よりも落ち着きました。

どうせ抜けるなら、新たに生えてくる髪に希望を持てるように、できることはやっておくのがいいのかなと思います。